はいじどう、ぜんじどう。

なんでも自動で出来る時代になると思ってたらそうでもなかった。

やさしい嘘

たぶん本当のことなのだろうけど、その人は私に「言いにくいけれど、もう忘れた方が自分のためだと思って」と教えてくれた。

 

これは噂程度に聞いた話だけど、という前置きがあって、どうやら前夫が関東から関西に移住したということを教えてくれた。それにはピンと来るところがあり、離婚前から仲良くしていた後輩の女の子がそっちにいるというのが非常に大きかっただろうと安易に予測ができた。こう言っては何だけど私も前夫も黙っていてもお互い異性に関しては事足りている人生を送ってきているので、こういう話は簡単に予測がつくというか、経験則で「あぁなるほど」と感じることができた。モテる者同士が離婚したんで、お待ちいただいている人たちはそれなりにいたんで、すんませんあとは順番です、ありがとうございます。正式に付き合ってる人はいませんが、もういい歳なんで結婚はどうでもいい。本当にどうでもいい。

 

そう、関西に移住したという話と、私と買ったあの高い車を売った(アメ車だったんで壊れまくってしまい、結果ほぼ無料だったらしい)っていうのを聞いて、もう何もかもを関東に置いて関西に行きたかったんだなぁとしみじみ思った。でもね、関西っていうのが「やっぱ小せぇなぁ」と思わざるを得なくて、今までの交友関係を断ちたかったからというのが理由のようなんだけど、全然甘い。もうみんなに会うつもりはないという決心はわかるが、そう思っておきながらこういう情報が漏れてくるあたりも脇が甘い。やっぱり最後に車代は半分返してもらうべきだったと心の底から思う。

 

「心配性で世話焼きなところがあるから、今でも頻繁に連絡をしているかもしれない。でもそれは向こうにとっては逆に困ることで、すべてを断ち切るために東京を離れたから、もうしないほうがいい。忘れたほうがいい。離婚前から女の影があったなら余計にもう詮索はしないほうがいい」

そう言ってもらって、だいぶ肩の荷がおりた。

私から言い出したことだし、私がいないと何もできないような人だったから、正直会社を辞めたときはものすごく心配した。仕事が決まらないと言ってたときも、だいぶ心配した。

この話も嘘か誠か証明できる人は、私が知る中ではこの「女の影」である存在の後輩だけなのだけど、彼女に連絡をとるなんてことは今更してはならない。でもひとつだけ、気づいたことがある。これが嘘でも、ずっと彼のことを気にかけていたのを気づいてくれていた周囲の人というのは大事にしなければならないということ。きっと前夫のほうがよっぽど傷ついただろうし、プライドもずたずたになっただろうし、しんどかっただろうと思う。だからこそ気にかけていたけど、まぁそうなる原因は私じゃなくてそっちにあったんだからっていう気持ちに自分ではどうしてもなれなかった。

 

とある12月のなーんてことない日、12/22だったか23だったかその辺に、ポンと離婚届を出しに行って、仮面友達みたいな関係だった人たちとも全部縁が切れ、私たちの離婚届を肴に笑って飲み会やるような連中と付き合わなくていいのかと思うとめちゃくちゃ清々して涙のひとつも出なかった。のに、心のどこかでは申し訳なさが残っていて。それを、もういいんだ。こっちが死んでもむこうが死んでも他人だ。それでいいんだ、と背中をおしてもらった瞬間に、二年分の涙が溢れ出た。

 

 

今の方が楽しいです。

だって好きな音楽聴けるし、好きな時間にお風呂に入れて、好きなだけ料理ができる。それができなかったときのことを思えばとても幸せだけど、毎日のように引っかかっていた何かがすっと取れてようやく肩の荷が降りた感じがします。今までありがとうという気持ちもあるけど、お前まじふざけんな車の金返せっていう気持ちの方が今は大きいし笑、それくらいでいいのかなと思いますね。

実は関東にいるのかもしれないし、関西でそれこそあの子と仲良くやってんのかもわからないけど、全部どうでもよくなった。二年引きずったなぁ。長かった。ようやくこれからが私の第二の人生の始まりかなと思います。