はいじどう、ぜんじどう。

なんでも自動で出来る時代になると思ってたらそうでもなかった。

人生を左右する刃

ちょっと気になるニュースがありました。身に覚えがあるので下記の件について少しだけ。

図工の授業中に彫刻刀を使用した児童が怪我をしたという内容です。

mainichi.jp

えっ、そんなに何人も怪我する?

彫刻刀だよね?

って思うじゃないですか。あれ、私も身に覚えがあるんですけどまあまあ怪我します。絵は好きだし、なんなら手先は器用だろうから自分は図工が得意だと思い込んでいたのですが、この彫刻刀ですっかり心が折れた一人です。ばっさりいきました。で、結果的に「別に器用でもなんでもないんだ」とトラウマになってしまい、以降、刃物を扱うことが怖くなりました。彫刻刀にしてもカッターにしても、もちろん家庭科の実習も死ぬほど嫌でした。だって器用じゃないと怪我するじゃん!!て思ってたんですね。

さて、美術教員の資格もあるこのはいじが「なぜこんなにも多くの子供達が怪我をすることになったのか」を考えていこうと思いますよ(偉そうにしてますが大して珍しいことじゃないですね)。

これは現代ならではの盲点だと思います。

恐らくですが、情報化社会ですので、なにをどうすればどうなっちゃうかなんて見りゃわかるでしょっていう教育者側の「こう扱うと危険です」という指導の怠りだと思います。教育側も色々と試行錯誤します。指導要領を作る上で、まず子供に嫌な思いをしてほしくないというのがあるわけで。それってただ単に得意・苦手の話だけではなくて痛い思いしたらそれはイコール嫌な思いをしたことになるじゃないですか。そうならないようにしなくてはいけないのに、そうだなぁ、今だと授業の時間が短いとか、色々と事情があってカットしたのかもしれないですよね。でも、一番大事なんです。危険な物の扱い方を知るということが。

鋭利なものは、刺したら貫通します。それを引き抜けば大量に出血します。

刺さずとも、柔らかい部分に当てて引けば大量に血が出ます。それに力が加わっていなくてもです。力が加わればどうなっちゃいますかね。想像できますね。

ようは今から皆さんが使うものは、ブツは小さいにせよ、自分や他人を大怪我させたりするようなものなんですよ。っていうことをきっちり叩き込まねばなりません。

私は確かに小学生の時、このようなことをちゃんと授業で聞いた気がします。自分の力を過信してて、自業自得で怪我したわけなんですけど。

どう指導で脅しても、一人や二人必ず手は切っちゃうもんなんです。でもこの人数はちょっとどうでしょうね。まだ想像力に乏しい子供達の「現代の情報量であればもうわかってるだろう」みたいな教育側の"知らないうちにナチュラル過信してた"みたいなものがあったんじゃないかと思います。危険物の扱いはしっかり最初に警告をし、その上で監督もして然りです。だってこのせいで彫刻刀が嫌いになっちゃったり、芸術が怖くなる子が出てきたらもったいないじゃないですか。そこですよ。彫刻刀って扱うの難しいけど、立体が作れる=個性が出ていいものができるツールなんです。絵なんかよりよっぽど個性が出ますし、やりだせば楽しいんです。それを怪我で「怖い」と思われてしまったり、「扱いにくい」と思われてしまうのは実にもったいない。

もしかしたら将来、芸術家になるような子が授業一回で刃物の扱いが怖くなってしまったら。

私だって克服するのに何年もかかりました。カッターはなんとか使えたけれど、彫刻刀は美大に入ってまたやることになって、その時になんとか克服しました。それでも怖かったし、調理実習なんてもってのほかでした。ピーラーですら怖いと思うレベルでした。なんでカッター使えてそっちが使えないんだって言われるとそれは謎。

そう思うと、小さな刃かもしれないけれど、彫刻刀って人生を左右する刃になるかもしれないんですよね。

怪我をしてしまった生徒たちには早い回復を祈ると共に、どうかこれで図工が嫌いにならないでほしいという思いでいっぱいです。教員の皆様も大変だとは思いますが、どういう時代だとしても昔も現代も子供は子供です。なにもわからないものです。怪我をしながら成長するのが子供だけど、授業中は怪我=事故ですから、授業中の怪我は最小限にとどめてほしいものです。

なんて色々書きましたけど、私の分野は絵画なので、いざ教える立場になったら彫刻刀はどうしたものかなって悩むと思います。あまりびびらせても、スピード感に影響が出てしまいますし。難しいですね、図工とか体育は特に。